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    1.「Wはダブル・ストーリーの歪」

    不気味な状況。w is for wasted
    この子たち...。

    まあ何とエピソードの多い話であることか。

    W is for Wasted の表紙。

    表紙。

    V is for Vengeance で紹介した猫が出てくる。キャッピに似た若者が出てくる。非常にユニークな美人弁護士も出てくる。だから本当は、そのまま「Wは椀子(わんこ)盛り」にしたかった。だが待てよ。椀子そばはあいにく食べたことがないが、一口で食べられる量を入れる椀なら、かなり小さいに違いない。そうなると、てんこ盛りの「いろいろたくさん」のニュアンスが椀子に載せられない。非常に残念、だが断念。

    大振りの塗り椀。

    椀子そば用の椀がせめてこのサイズなら…。

    それにしてもてんこ盛り。交通整理をしなければ、そのうちにこんがらがる。そういう時の道標(みちしるべ)に、と私がW is for Wastedを読みながら念じていた言葉が、「2本立て」。

    老探偵が殺害されたのは道端。

    老探偵は夜の路上で殺害される。PexelsのAhmedによる写真。

    二つの男の死体があがる。一人はパッとしないズルも色々した老探偵、キンジーがかつて探偵業の実地訓練を受けていた探偵事務所に出入りしていた。そしてもう一人、キンジーのオフィスの住所が書かれた紙切れを持っていた、遺体安置所に横たわる、見たこともない老人(後にキンジーの父方の親戚と判明)。その二体の死体が、キンジーを社会病質者の犯罪へ導き、見たことも会ったことも存在していることさえ知らなかったキンジーの父親側の親戚の発掘、へと展開する。そういう2本のストーリーの話である。その二つのパラレルに展開する状況の過程に、そのてんこ盛り椀のエピソードが次々絡み、やがて二つは密接に繋がっていることが判明、キンジーが体を張って事件を収束させる。

    遺体安置所で遺体の確認。

    遺体安置所で遺体の確認。

    グラフトンも焦ったに違いない。AとかGを書いているうちは、まだまだ先はとても長い、とのんびり構えていたが、Wともなればもう残りあとわずか。これまでたくさん書き留めておいたエピソードやネタのメモを整理しながら、これ全部書きたい、それも書かなくては、あれすっかり忘れていた、とW is for Wasted の骨格を組み立てながら、どこにどのようにそうしたエピソードを絡ませようか、色々算段したに違いない。と、推察。

    きれいに忘れられていた父方の親戚が登場。V is for Vengeanceの事件が終了してから開かれた5月のメモリアル・デーのパーティで、母方の祖母には紆余曲折を経てようやく会うことができた。万々歳。次なるは父方縁者?いや、実は、父親サイドの親戚のことなど、考えたこともなかった。それが故あって、同じ年の10月、あちらがキンジーを探してくれた。

    結婚式の写真に2家族が集結。

    昔の結婚式の写真、2家族全員集合。

    親戚縁者は増えたら儲けもの、多いほうが楽しいに決まっている。滅多に会わなければ他人の始まり、まめに付き合おう。第4親等(いとこ同士)以上は、もうほとんど他人。いとこ同士の付き合いがなければ、その子供たち(6親等)同士は互いの存在すら知ることがない。親戚なのに他人とは何と哀しい、血が繋がっているのに。

    遊ぶ「またいとこ」同士。

    「またいとこ」同士で遊ぶ。lisa runnelsによるPixabayからの画像。

    それはどうしようもない宿命だ。先祖たちも私の年齢で同じことを実感したに違いない。年齢が高くなるにつれ家族・親族・友人・知人が減っていく。私たち夫婦にはもう両親がいないし、私の姉と妹もすでに他界している。いつの間にか私たちはそれぞれの家族の頂点に近づき、現状の他「なりようがなかった」世代交代を見て、どうかジリ貧に消滅しないで欲しい、と祈るばかりだ。こればかりはどうしようもない。なるようにしかならない。昔とは違う。今の時代、若いころは人生を切り開いていくことで精一杯だから。

    私がシナリオの勉強を始めた20代後半、スクールの老教授は初授業の冒頭に言った。
    「狂人」と「奇跡」と「ある日突然」は避けること。
    教えを愚直に守ってそうしたものは避けたけれど、実は、狂人とはその異常性が高ければ高いほど興味が湧く。怖いもの見たさ、という言葉もある(でしょ?)。グラフトンは凄い、そうした古いold schoolのタブーに果敢に取り組む。彼女が描く異常シーンは怖さが強烈、何度も私の心臓は早鐘のように打ち、呼吸は浅く速くなり、途中で休憩が必要だった。それほどの恐怖をキンジーは直・体験するのだ。

    不気味な状況。

    何だ、これは…。

    この怖い話、私は『Wはダブル・ストーリーの歪』とした。社会病質者は「歪」、その異常犯罪は「歪」。間違っていれば正さなくては、不足していれば補わなくては、過剰に過ぎれば減らさなくては、というキンジーの正義感も含めて。Yと同じ音で紛らわしいので、敢えて変則的に形容詞句をつけた(少し捻りました)。

    不気味な暗い部屋。

    この部屋…何か怖い。

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