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    したいのしー

    3冊目の本、U is for Undertow。U is for Undertow
    次はU。U is for Undertow。

    いよいよ U is for Undertow 。その前に、アルファベット・ノベルズの題名について、考察を。

    まずA is for AlibiB is for Burglar、そして C is for Corpse に注目してみる。アルファベットとそれぞれの本の主題を繋ぐのは、そのアルファベットである。一目瞭然ながら、is の両側のアルファベットが揃う。声を出して読んでみると、アルファベットは揃っているが「音」はそうではないものがあることもわかる。それは、 C is for Corpseに端的に示されている。この corpse、[ko:ps] と読む。cは[s]の音の他に(catとかcutとか)[k]の音も持つ。つまり、アルファベットは同じでも、それぞれの頭の音は異なることもある(質問:本の主題が Psychology だったらどうしますか)。

            A is for Alibi                                      

    もし日本語で同じような試み(仮名シリーズの企画)がなされたとしたら、その時は「かな」と「音」が同時に両項を繋ぐ。例えば、「犯人(んにん)の」とか「尾行(こう)の」のように。日本の仮名は、「文字であると同時に「音をあらわす記号でもあるからだ。

    犯人(んにん)の

    訳出された題名には、アルファベットと仮名(漢字やローマ字を読んだときの音)が使われる。2言語が出会う。2文化が出会うと摩擦が生じる。それなのに。この偶然には驚くばかりだが、『死体のC 』では(文字だけではなく)音の一致がみられる。日本語と英語、全く異なる音を使う言語が、二つ同等に並ぶのだ(ま、日本式に読むというプロセスを経るからね)。声を出して読んでみるとよくわかる。「たいの」ときて、日本の読者ならば全員揃って「ー」と読む。Cを[si:] と続ける人は、まずいない。バイリンギャルならそう読むかもしれないが、始まりが日本語なので、そのまま勢いで[ー] と読む公算が強い。その結果、「たいのー」。

    『死体のC』は:

    死体(たい) の C (ー)

    英語の題名では何の困難もない左項と右項の一致も、翻訳題名ではほとんど不可能となる。その結果、『証拠のE』、『逃亡者のF』、『探偵のG』などというように、題名エッセンスの直接的な訳語が使われ、オリジナルにあった規則性は失われる。『アリバイのA』は数少ない例外である。訳語である「現場不在証明」を使う人は今やほぼいない。日本語として定着しているので、そのまま「アリバイ」と使う。『アリバイのA』と聞いて何となく一致を感じるがそれは、ローマ字を覚えたとき「A」を「あ」と覚えたことに起因する。瞬間的に「音」の一致を感じ、すんなり納得して落ち着く。でも、厳密には一致していない。「A」は[ei]で「アリバイ」はオープンな「a」。見た文字を脳は瞬時に音でも感じているのだ(すごいね)。

    A is for Alibi

     ア()リバイ の A(。でもと感じる

    邦題の『騙しのD』や『ロマンスのR』も例外的。この二つは、アルファベットの「子音」の音(d とr)がたまたま、その音で始まる日本語である「騙し(だまし)」の d の音や「ロマンス」の r の音と合致した。いや、訳者が頑張った

    騙し(Damashi)の D

    ロマンス(Romansu)の R

    [ 泥棒(Dorobo) の B ]

    私は『アリバイのA』、『死体のC』、『騙しのD』、そして『ロマンスのR』で大きな満足を感じる。邦題も原題のように揃っている、左項と右項が合っている。『泥棒のB』は、まあまあ合格。「泥棒」の中に長いbの音があるため、Bの印象が強く残るから。他の13作の題名では、英語題名の「is」 にあたる「の」の両項が等価ではないので、収まりの悪さを感じて何となく不幸だ。どこかに何かの突破口はないだろうか、と思うがもちろん、ない。翻訳の作業の中で、この点については翻訳者も編集者もアシスタントも、必死に知恵を絞った結果、がいま私たちが手にしている完成品。

    満足している猫。

    食欲も興味も満たされ、眠いかも。Pixabay。

    これは恐らく私だけに限ったこだわりで、こだわりは時にして不満足やプチ不幸をもたらすので、あまりに強いこだわりはないほうがいい。

    不満のあまり腕組みをする少女。

    少々不満です。

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