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    キンジーの観察眼:家を見る

    豪邸の正面。T is for Trespass
    豪邸。F. MuhammadによるPixabayからの画像。

    キンジーが人と会うとき、その人の容貌や服装また仕草や言葉から実に多くのことを読み取ることは、S is for Silence でつぶさに見たが、その観察眼は人に限定されているわけではない。

    人を家に訪ねるとき知らず知らずに観察しているのが、その人の住む家である。

    知らない町を走るときも、通り過ぎる家々を見ている。

    平屋建ての大きな農家。

    農家。LolameによるPixabayからの画像。

    アメリカは「見た目」を重視する社会だ。私が家族と2年暮らしていた1980年代半ば、「美は金のパスポート」と公然と言われていた(ちなみに「知は銀」)。特に反発を招くこともなく、事実として受け入れられていたように記憶する。きれいに化粧をした美女や仕立てのよいスーツを着たイケメンが、力や特権をビンビン主張しながら闊歩していたが、それは今も(日本でも)同じだ。

    プラチナブロンドの美女。

    プラチナ・ブロンド。dashaproによるPixabayからの画像 。

    美しい男。

    男も美しいほうが何かと有利。PexelsのOlha Ruskykhによる写真。

    家も同様。立派な構え、広い敷地、庭のプール、林のそばの東屋、見事に手入れされた植栽、そうしたもののすべてがそこにかけた金額の大きさをきっちり外界に示し、これ見よがしの風情で立つ。

    豪邸とその庭。

    豪邸。PexelsのRachel Claireによる写真。

    美人でない女、学歴のない男、金のない家族は、そういう最高標準を自分たちの「到達点」として捉え、いずれ、そのうち、私も俺もウチも、と心に誓って少しずつのグレードアップを試みる。そうしながら、時々彼らの水準を改めて確認、さ、また頑張ろう、と発破をかける。

    丘の斜面に建つ小さな古い家、多数。

    丘の斜面に建つ古い家。PexelsのYEŞによる写真。

    もちろんそのようなことには一切拘泥しない人たちもいる。探偵キンジー・ミルホーンもその部類、そうした欲求とは無縁だ。

    アパートメントの舷窓を模した窓。

    キンジーの部屋、舷窓を模した窓がある。PexelsのRahulによる写真。

    キンジーはまずしっかり鏡を見ることすらない。美醜を超越して生きているわけではない。美しい人は美しい人として受け止める。ただ単にきれいに装うことなどに興味がないだけ&自分の持つ良さを認めるにはあまりにシャイ過ぎるだけ。それで困ることは何一つない。

    キンジーのバスルームの鏡。

    キンジーのバスルーム。PexelsのKarolina Grabowskaによる写真。

    つまり、「美は金のパスポート」はキンジーには何の意味も持たない。同様に、彼女が金持ちの豪邸に羨望を抱くことはない。仕事柄これまで何度も富豪の家、金持ちの家、一般市民の家、安普請のボロアパート、等々様々な家を訪ねた結果、家の資産価値、その家が建つエリアの開発コンセプト、などかなり細かいこともきっちり理解できるようになったが、ここに住みたいと強く願う家は、一軒もない。

    建売住宅。

    郊外の建売住宅。Pete CurcioによるPixabayからの画像 。

    でも、興味が湧く家はある。キンジーが惹かれるのは、こじんまりとした気持ちのいい家で、この家にはどんな人が住んで、中はどういう風になっていて、そこでは毎日どんな生活が繰り広げられているのだろう、と色々に思いを巡らしたくなる家だ。

    心惹かれるドア。中には何が?

    ドアの中には、どのような生活が?

    だから、そのような家のドアが開けられ中に招き入れられ椅子を勧められて座るまでの短い間、彼女はその短い距離をゆっくり歩みながら超速で左右・前後をアレコレ観察・確認する。一番興味のあるのが、間取り。決まったパターンしかないはずなのに、全体的な印象は家の数だけ異なる。キッチンと食事エリア、なるほど、居間はこう繋がるのか。さらに、置かれた家具の調和、漂う部屋の匂い(キンジーは鼻がすこぶるイイ)などを確認せずにはいられない。そこで住人の住まいへの思い入れ、住人の生活への意欲が感じ取られると、彼女はとても幸せになる。

    居間から階段を見る。

    居間。後方階段周りのデッドスペースが巧みに整えられている。StockSnapによるPixabayからの画像。

    推測するに、これはキンジーが幼いころ、トレーラー・ハウスに住んでいたことに起因する。生活に最低限必要なものを搭載した極小のスペースで、キンジーはジン叔母から字を学び学校へ通い始める。その小さなスペースの中にも、本に読み耽ることができる自分の場所を彼女はちゃんと確保した。でも、その頃はまだ小さかったにもかかわらず、トレーラー・ハウスをとても狭く窮屈に感じた。当時の夢が、他の子たちと同じように、普通の家、に住むことだったのだ。

    トレーラー・ハウス。

    トレーラー・ハウス。入った左手はソファ兼ベッド。Pexelsのcottonbroによる写真。

    それでも結局 small space にほっとする。ヘンリーが設計してくれた、小さいながら必要なものがすべて揃っている、ロフトの寝室もある、自分だけのためのスタジオ・アパートメントがキンジーは大好きだ。

    冬が来る前に、ヘンリーはそのドア口の小さなポーチにマリゴールドを6鉢並べて、キンジーの「城」を賑やかに華やかに飾ってくれた。

    元気が出る黄色のマリゴールドの花。

    元気が出る色のマリゴールド。congerdesignによるPixabayからの画像。

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