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    バイオレット登場

    S is for Silence

    S is for Silenceの主人公はViolet。24歳ととても若い、しかし7歳の娘を持つ、美人だ。キモノと呼ぶローブを羽織った姿で彼女は物語に躍り出る。

    化粧台の上の化粧道具

    バイオレットの化粧台

    そのキモノがまた印象的で、cerulean、つまり緑味がかった青色、の地布に緑と橙色のサテンステッチで分厚く盛り上がった体をうねらして、犬のような顔の大きな口から血の色の火を噴く龍の絵柄(外人向け土産物屋に吊るされている化繊の、明らかに中国風のアレ)だ。化粧台の前でゆるく結んだ紐を解けばするりとキモノは肩から滑り落ち、シミひとつない美しい肢体が現れる。

    Cerulean Blueは、カラーサイト.com、https://www.color-site.com/names/351 でチェックをどうぞ。

    色とりどりのパレット

    化粧パレット

    この冒頭のくだりは、美しい色の洪水だ。龍の刺繡の青緑のローブ、オレンジ色に近い赤色の彼女の毛髪、皺もシミもない若い顔の中の緑の瞳、厚く塗った薔薇色の唇。化粧を終えた彼女が素肌に着るサン・ドレスの水玉は、菫色。

    この一部始終は14歳のベビー・シッターの目を通して描かれる。

    夜空いっぱいに広がる花火

    花火の夜

    この日、7月4日土曜日、アメリカの独立記念日。暗くなれば全国一斉に花火が揚がるという、国中が解放感に溢れている夕暮れのひととき。余念ない準備を終え、バイオレットはシッターに優しい一声をかけて出かけていく。

    だが、彼女が戻ることはなかった。

    羽を広げて飛び立った美しい緑の小鳥。

    小鳥の飛翔

    小さな体から溢れ出るバイオレットの自由奔放さは小さなコミュニティにはとうてい収まりきらない。それゆえ生じる不条理さを幼いころからずっと、否応なく目前に突き付けられてきた。厳しい叱責や非難、公然と投げつけられる罵詈雑言、そうしたものにバイオレットはそのころから挑んできたのだ、許される限界を公然と破る、という方法で。その結果、誰からも嫌われ蔑まれる。父親からは勘当される。

    バイオレットはそんなことは気にしない。いつでも思い通り、好きなようにしてきた。

    ただ、妊娠して家庭を持っても、そこに平穏があるわけではない、幸福があるわけではない。彼女は子供のまま大人になり自分の幸せを追い続けるが、時が経てば彼女自身も成長する。そして、そうした規範からはみ出る自由を認めないコミュニティの閉塞感の中で決して満たされていない自分に気づき、ついに小さな鳥籠から外の広い世界へ飛翔を試みようとする。

    波しぶきの中を飛ぶ鳥一羽

    大きな世界へ

    溢れる色彩、その中でスポットライトを浴びる、美の頂点にあるバイオレット。美女で始まる物語はいつも素敵だ。

    若く美しい女が姿を消す。それは、キンジーの住む「現在」から34年ほど前の出来事だった。

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