
S is for Silence の表紙
購入したこの本はペーパーバック版、表紙を開いて驚いた。そもそも外表紙の幅が次のページである内表紙(と本体)より5ミリほど短い。それで自然に誘導されて、どうしても内表紙を見ることになる。その内表紙、アルファベット模様の中央上部に、大きなSの文字が淡いスポットライトを浴び、白抜きの小さい字で is for と並び、その下に2列3段組で7つの最小・最短書評が紹介され、その出自が添えられている。
“Superb.” “Satisfying.”
_The Associated Press _Omaha World-Herald
アソシエイテド・プレス オマハ・ワールド-ヘラルド
というように。後の5つは、“Splendid” “Stellar” “Super” “Stunning” で、最下段が、少しだけ長い”S is for Staying Power….” で締めくくられる。

超短ブック・レビュー
もちろん書評を書いた各誌、足並み揃えてSで始まる超短い一語で表現したわけではない。各誌の書評担当者、頭の隅でこの本の題名がSで始まることを意識してSで始まる語を使ったのか、いや無意識にSで始まる言葉を選択したのか、単にSには最上級の賛辞の言葉が多いのか、そこのところはわからない。が、あくまでも、各書評の中に一語でこの本の感想を表すことができるSの言葉を発見したのは、そしてそれをこうして集めたのは、才気ほとばしるこの S is for Silence の編集者。洒落たアイディアだ。インパクトが半端でない。とてもすてきだ。
ちなみにここの部分の訳、Sの音で統一を試みる。
1.S is Superb. Sは最高。
2.S is Satisfying. Sは最大満足。
3.S is Splendid. Sは素晴らしい。- Chicago Sun-Times
4.S is Stellar. Sは至高。- The San Diego Union-Tribune
5.S is Super. Sは最上級。- The Calgary Sun
6.S is Stunning. Sはすごい。- Booklist
7.S is Staying Power. Sは底力。- The Miami Herald
この Stunning の「すごい」はよくぞ思いついたと我ながら誇らしい。口語ではまさしくこのニュアンスで使われている。辞書に載せて欲しい。Stellar は案が尽きてお手上げ状態で、まだ使っていない「すてき」か、サ行では始まらないけれどさほど遠くない「上質」もしくは「上等」で妥協しなくてはならないかと思ったときに、ツルンと降りてきた。「素晴らしさ」に「星を抱く天の高さ」が加わった「至高」、これもなかなかいけるではないか。いや、実はもっとシンプルに「スター」でよかったんだけど。せっかくだから。

星を抱く高い空 by Cliford Mervil
ここではっきり言っておかなくてはならない。この最大級の書評を表紙のすぐ次、内表紙、に意匠を凝らして載せたのはただのデザインではない。意味がある。この本にはそうするだけのエネルギーが溢れている。つまり、Sは文句なく面白いのだ。おそらく、このSはアルファベット・シリーズの最高峰。そう思わざるを得ない所以をこれからおいおい書いていくのだが、「もつれた筋」の運びを一切書けないことが重ね重ね、残念。皆さんおん自ら、辞書を引き引き読まれることを、切に願うばかりである。
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