初めまして。「キンジーの時間」へようこそ。いずれ完成すれば、スー・グラフトンの「アルファベット・シリーズ」全巻と関連図書のコレクション(本棚2段で収まる予定)の管理人、小澤、です。このコレクション、とりあえず、「キンジー文庫」とでも呼びましょうか。
『アリバイのA』を区立図書館の書棚で見つけたのはかれこれ30年ほど前。それからその頃小学生だった子供達が思春期を通り抜けるまでのおよそ10年間、私はスー・グラフトンのアルファベット・シリーズを読み続けました。
子供が成長する忙しい時期、推理小説は現実に距離をおいて、潰れかける個の軌道を修正するための最適ツールでした。深夜の居間で、やめられずに読み続けたその胸躍る時間は、忙しいけれど求めればどうにか手に入る、自分一人だけの貴重な時間だったのです。そこでパトリシア・コーンウェル、ミネット・ウォルターズ、ディック・フランシス、なども併せて読みました。

飲むのも忘れ読み耽る
女性探偵のシリーズ物が他にもある中でアルファベット・シリーズを読み続けたのは、主人公キンジーの生活のシンプルなリズムが大変心地よかったからです。彼女の感性や在り方がとても好ましかったからです。彼女を取り巻く環境の核となるのが大家のヘンリーですが、キンジーと彼との信頼関係も魅力的でした。彼はまた大切なものだけを残した豊かな老後を、30年以上も前に見せてくれたのです。そして、その平和の対極に位置する犯罪が、グラフトン特有の簡明直截な筆致で、キンジーを絡め取って極めて残忍にどす黒く描かれる、そのバランス・対比の妙に強く惹かれたからでもあります。

Bookstore by Tuur Tisseghem
その多忙な時期を経て、自分の時間を潤沢に持てるようになってしばらくした2年ほど前のある日、たまたま書店でペーパーバックの Y is for Yesterday を見つけ、キンジーを懐かしく思い出しました。このシリーズは『ロマンスのR』まで、書棚にあるだけ全部、を読んだはずなのに、なぜ途中で読まなくなってしまったのか?そう思って調べると答えはすぐにわかりました。翻訳が『R』で終わっていたからなのです。どうしてなのでしょうか?かつてこのシリーズが並んでいた図書館の棚に、もはや彼女の作品は1冊もありません。それでも、オリジナルは Y まで発行されている。それでは、選択肢は一つしかないではありませんか。S から Y までオリジナルで読みました。電子辞書を横に置いて。

T is for Trespass、作業中
私の第二の「キンジーの時間」の始まりです。最初の S is for Silence から最後の Y is for Yesterday まで全7冊。読み終えるのに4カ月ほどかかりましたか。すると『A』から『R』も読みたくなりました。改めて『アリバイのA』 から始めましたが、登場人物はぼんやり覚えていても、展開はおろか結末すらすっかり忘れていたり、読み始めても最後まで内容を全く思い出さなかったり、数百ページの物語の中のある数行だけをしっかり覚えていたり、と記憶の不思議に驚きを覚えながら、初めて読む時と遜色のない新鮮な楽しみを味わいました。
これからしばらくは、未翻訳の7冊に描かれる事件の超・簡単な展開、ネタバレを避けながら、どのような事件であるか、キンジーがその事件で見せる魅力、などをご紹介していきます。それからは既翻訳18巻を、同様に1巻ずつ、再読しながら感じたことや発見したこと、などについて書きます。全巻について書き終わる頃までに、
- 「キンジーの年譜」や
- 「全事件一覧表」、また
- 「サンタ・テレサの地図」、さらに
- 「キンジーのスタジオ・アパートメント平面図」、そして
- 「(私の)登場人物人気投票上位10人」なども完成させられたらよいのですが。
グラフトンの読者やキンジーに共感する皆さんとキンジーの世界を共有する、26件の事件を経験しながら成長するキンジーの魅力について語り合う、このブログはそれを目的としています。ブログへのご意見、アルファベット・シリーズの本の感想、などありましたらお寄せください。ネット上で共有できたら望外の喜びです。
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